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  • 執筆者の写真zin ikai

からだあつめ

更新日:2022年4月4日



▼目次

・はじめに


シナリオの概要


共鳴者は西宮という友人から「実家の倉庫の掃除を手伝ってくれないか」と頼まれます。

西宮の実家は大きな日本家屋で、件の倉庫は誰がどう見ても蔵だった。

掃除を始めた共鳴者は蔵の中で人形の首を発見する。


人数:1人~3人

想定時間:1~2時間


共鳴者作成について


共鳴者には西宮という友人がいます。

複数の共鳴者で行く場合は共鳴者同士を顔見知り以上の関係にして共鳴者と西宮の関係性を明確にしておきましょう。

推奨技能:〈聞き耳〉


登場人物

​西宮(にしみや)

共鳴者と友人関係にあり、共鳴者に「倉庫の掃除を手伝ってくれないか」とお願いをする。

軽い性格。

​傀儡の妖

1000年以上前に西宮の先祖に作られた傀儡人形。あまりにも精巧に作られており、人間の関節にあたる部分がほとんど再現されている。

HP12(最大) イニシアチブ値2

🎲*格闘 D数1/判定値2

​西宮の先祖の霊

かつて傀儡人形を作り、妖になった人形を封じた傀儡師。


・シナリオ

導入:倉庫?の掃除


共鳴者は、西宮という友人から実家の倉庫の掃除を頼まれます。

西宮が共鳴者にお願いするところから描写して始めてもいいかもしれません。


西宮家は西宮の両親が二人で暮らしています。

今は留守にしており、ここにいるのは西宮と共鳴者のみです。

​共鳴者は友人である西宮の実家に向かっていた。

西宮に「実家の倉庫の掃除を手伝ってほしい」と頼まれたからだ。

彼曰く、彼の両親から「掃除をしたらバイト代を出す。何かめぼしい物があったら鑑定に出して売ってもいい」と言われたとのこと。バイト代を貰い、倉庫で見つけたものを換金して一緒に稼ごうという算段らしい。

そういうわけで都心から少し離れた田舎町を訪れているのだった。

そして、西宮家に到着した共鳴者は驚いた。想像していた倍以上大きな家だった。高い塀で囲われ、門があり、玄関にたどり着くまでに広い庭を通る。そんな大きな日本家屋だった。

呼び鈴を鳴らすと、中から西宮が出てきた。

「おつかれさん!遠かったっしょ。今日は悪いね~ホント」

やけに口調が軽い。本当に悪いと思っていなさそうだ。これからやる掃除もとい宝さがしにワクワクを隠せないといった感じだ。

西宮は門のかんぬきを開け、共鳴者たちを敷地内に招き入れる。

「さささ~こっちだよ」

母屋には通されず、そのまま裏手へと回る。

「ここだよ、今日掃除する倉庫」

どこからどうみても”蔵”だった。

探索:蔵1


朝10時ごろから掃除を始めたことにしましょう。

​「実は…俺も中に入るのは初めてなんだよねぇ」

西宮は蔵にかかっている錠前をガチャガチャしながら共鳴者たちに言った。

「俺どころか両親も入ったことないみたい。最近じいちゃんの遺品整理してた時に蔵の鍵を見つけたらしいんだよね」

それで蔵の整理を頼んだと。そういうことらしい。

西宮はポケットから鍵を取り出すと、錠前に差し込み少し力を込めて回した。

錆び付いていたのか開けにくそうではあったが、ガチャリと音を立てて錠前が外れた。

「じゃあ、開けちゃうぞ」

共鳴者たちの回答も待たずに、西宮は蔵の扉を開けた。

中はとても埃っぽく、いたるところに蜘蛛の巣が張っている。もう何十年…下手すると百年以上もの間、誰も入っていないんじゃないかと思うほどだった。

西宮もこれには流石にぎょっとしている。しかし、意を決したのか「よっしゃ…!やるぞ!金の為…金の為…」と自らを鼓舞し始めた。

共鳴者たちもそれに続き、掃除を開始するだろう。

蔵はやや広い二階建てという設定です。

西宮と共鳴者は別々の階を掃除しているということにするといいかと思います。


しばらく、掃除RPを挟むといいでしょう。

掃除に適した技能を振らせたり、また珍しいものを見つける為に〈*幸運〉や〈鑑定〉等の技能を振らせ、成功数に応じて高価な品物を見つけたことにすると面白いと思います。

 🎲〈★霊感〉:一枚の札が目に入る。表面には解読できない文字や記号が書かれている。

霊感を使った人数やダイスの成功数にかかわらず1枚だけ見つけることができます。

このお札は後半の攻防戦、戦闘で使用することができます。

1ターンだけ人形の行動を止めることができます。


頃合いを見て次の描写をしてください。(一人でも複数人でもいいです)

​掃除の最中、共鳴者は妙なものを見つける。

およそ大人程度の大きさの”何か”に布がすっぽりと被さっている。

布を取り払うと、辺りに埃が大きく舞った。それと同時に”何か”は姿を現した。

木で作られた人間の顔を模したもの。いわゆる人形の顔だ。顔より下は綺麗な和服が着せてあった。

いや、着せてあるというわけではなかった。服は吊るしてあるだけのようで、首から下のパーツが一つもなかった。

 🎲〈直感〉〈鑑定〉:最初から首だけなのではなく、元はそれ以外のパーツも揃ってあった大きな人形なのだろうと分かる。更に、この顔のパーツは可動式だろうということが分かる。

 🎲〈聞き耳〉:人形の方からカタカタッ…と木が打ち合った音が聞こえた気がした。嫌な気配を感じた。

  🎲共鳴判定(強度5/上昇1)

  ∞共鳴感情:自己顕示(欲望)

この人形は傀儡の妖です。

この後共鳴者が昼食をとるため蔵を離れた隙に逃げ出します。

もし万が一、共鳴者が蔵の扉を閉めて出ようとしたら西宮を使って開けさせてください。


イベント:品評会

​「結構片付いたんじゃない?」

蔵の中を見渡して西宮は言った。

掃除を始めておよそ2時間が経った。時間的にもうお昼頃で共鳴者も少しお腹が空いてきただろう。

「そろそろ飯にしないか?休憩だ休憩!」

西宮は共鳴者を呼んだ。


共鳴者は母屋の方に案内された。勝手口から上がると、そこは台所だった。テーブルの上におにぎりがたくさん乗ったお皿が置いてあった。

「今日、親出かけててさ。明日の朝に帰ってくるらしいんだけど、今朝母さんが大量に作ってくれたんだよ。こっちで食おう」

西宮はお皿を持ち、台所と繋がっている居間の方へと向かった。


昼食を頂き、しばらく休憩となった。

「そういや、何か見つけたか?こう、珍しい物とか、金になりそうな何か…」

西宮は共鳴者に尋ねた。

(見つけていてもいなくても)「今後も何か見つけたらこの部屋に固めて置いておいてくれるか?一応、親が帰ってきたら売っていいか聞くから」

そう言うと西宮は自分が見つけたものを持ってきて、床に広げた新聞紙の上に置いた。

大小問わず珍しい物をジャラジャラと持ってきていたが、その中で一際気になったのが、表紙に何も書いてない冊子、重そうな壷、巻物のみっつだ。

共鳴者の見つけたものと西宮の見つけたものを見せ合う流れで、品々を調べましょう。

判定に失敗しても、西宮を使って情報を出すなどの措置を取ってもいいでしょう。

​・表紙に何も書いてない冊子

地味な装丁で紐を使い綴じられている冊子だ。

内容を見てみると絵や図がびっしりと、何ページにもわたって描いてあった。

ところどころに人間のような絵が描いてあるのが見受けられた。

 🎲〈鑑定〉〈直感〉:人型の人形を作るための設計図だと分かる。何ページもあることから、とても精巧なものだろうと察することができるだろう。


​​・重そうな壷

大きな口の壷。同じ柄の蓋で閉じられている。

開けて中を覗き込むと、いっぱいに灰のようなものが詰まっていた。

よく見ると灰の中に、同色の固形物がいくつかみられる。共鳴者は見覚えがあってもいいだろう。それは焼かれた人の骨であり、つまりこの壷は骨壺なのだろう。

気のせいだろうか、この遺骨が熱を帯びている気がした。

 🎲共鳴判定(強度3/上昇1)

  ∞共鳴感情:罪悪感(傷)、哀しみ(情念)

 🎲〈心理〉:西宮の表情が変わったのを感じた。何か、普段の西宮とは違ったものを感じる。

​​・巻物

絵巻のようだ。人が人形を操って芸をしている。

これはまぁまぁ高そうである。

骨壺に入っているのは傀儡師の骨です。そこには魂の残痕があり、西宮に憑依しました。

これより西宮の喋り方に変化をつけてください(やけに落ち着いたようになど)

​「そろそろ再開しようか」

西宮は立ち上がり共鳴者たちに言った。

 🎲聞き耳:居間の床下から何かが這うような、動くような音がした。

居間の床下に傀儡の妖がいます。そこには右腕のパーツがあるのでそれを取りに来ています。

共鳴者が急いで外に出て床下を覗き見るといった行動をとった場合、何かが動いた影を見てもいいでしょう。そしてそこには何もなかったことを描写してください。


イベント:蔵2

​蔵の掃除を再開した共鳴者は真っ先に気が付くだろう。

先程見た人形の首と服が丸ごと消えていたのだ。

人間の大人くらいのサイズだったので、無くなったりするわけがない。盗むにしてもこの雑然とした蔵から運び出すのは一苦労だろう。


突然、西宮が共鳴者たちを呼び集め二枚の紙を見せた。

「どうやら家の見取り図らしいのだが、いたるところにバツ印が付いてあるんだ。どうだろう、これを頼りに見に行ってみないか?」

 🎲〈観察眼〉または手に取る、裏を見る:紙はとても昔のものに見えるが、見取り図は最近書かれたものに見える。裏を見ると、西宮が見つけた冊子の裏をを使ったと分かる。

プレイヤーにマップを公開してください。





「掃除はどうする」などと言って制止しても西宮は止まりません。無理やりにでも共鳴者を家の中に連れて行くでしょう。「何を探すんだ」と聞かれてもはぐらかしてください。


探索:母屋

​勝手口から母屋に入り居間までやってきた共鳴者たち。

「どこから探す?」

西宮は見取り図を広げ共鳴者たちに見せながら問いかけた。

母屋は二階建て。探索箇所はマップ記載の通りです。

バツ印の箇所に人形のパーツが隠されています。


バツ印の箇所以外を調べようとした場合、西宮に「そっちじゃない」などと言われ、引き止められるというような描写をするとスムーズに進むと思います。それでも別の場所を調べたいのであれば時間経過になるので、人形に先を越されパーツを取られてしまうなどでもいいでしょう。

また、探索に手間取りパーツを探すのに時間がかかった場合も人形に奪われる描写をしてもいいかもしれません。


探索を西宮に頼もうとすると、基本的に断ります(危険な場所ではないときは協力します)。

これは憑依している西宮の身体が傷つかないようにするためです。

​​・居間

居間の中の、バツ印が指し示す場所には何もない。ただの床だ。

 強引に畳をはがす→バリバリと音を立てて畳がはがれる。床板には無数の黒い手形がベタベタと付いていた。MPを1d3減少。

 🎲〈*調査〉:その手形はどれも同じ方の手であるとわかる

床下を見に行く→そこには何もない。

 手形があった床の裏面を見る→居間から見た手形と逆方向の手形がある。

「ここのはもう取られてしまったか・・・」と西宮がつぶやいた。

​​・風呂

バツ印が指し示す場所には古めかしい風呂桶があり、木の蓋がしてあった。

 蓋を開ける→ただ水が張ってあるだけだった。


 🎲〈聞き耳〉:天井からドン…ドン…と音が聞こえる

手段は問わず天井に手が届いたなら、天井の板が外れそうなことに気づく。

強く押し上げるとガコンと音がして板が外れた。

共鳴者が天井裏を覗くと、”左脚”があった。左脚のみでぴょんぴょんと飛び跳ねていた。

よく観察したり手に取ってみると分かるだろう。本物の人の脚ではないことに気づく。木で作られたとても精巧な物だ。関節にあたる部分がきちんと動くようだ。

共鳴者がその脚を持って下に降りようとした時、突然何者かに腕を掴まれ、そのまま天井裏へ引っ張り込まれそうになった。

共鳴者はその腕を掴んできた者をちゃんと目撃してしまうだろう。そこには、ゆらゆらと宙を舞う和服を着た木の人形がいた。

 🎲共鳴判定(強度5/上昇1+取り戻したパーツ数)

  ∞共鳴感情:自己顕示(欲望)、恨み(情念)

 🎲〈*運動〉〈ストレングス〉:人形は共鳴者の持つ左足を狙っているようだ。

 成功→人形の手を振り払うことができた。

 失敗→人形に左足を奪われたしまった。

共鳴者はあまりのことに驚き身を引いた。

「大丈夫か!?何がいた?」

西宮が共鳴者に尋ねる。

上を見上げると、そこにはもう何もいなかった。

​共鳴者が人形を見たことを話し、あれは何だという話になると思います。

下の描写をしてください。

​西宮は落ち着いた様子でひとつひとつ語りだした。

「信じられないかもしれないが、私はあの人形を作った人形技師だ。霊体というと分かるだろうか。まぁ理解しがたいとは思うが、今はこの男の体を借りている状態だ。あの人形は遥か昔に封印したのだが、長い年月を経て封印が解かれてしまったらしい。私の子孫たちが封じ隠してくれた奴の手足がこの家に散らばっている。奴が全て取り戻し完全に復活する前に先に集めたい。そうすれば復活を阻止でき、また封じることも可能かもしれない。協力してくれないか」

共鳴者が了承すると「ありがとう。急ごう。もうあまり時間がない」と歩き出した。

​​​・階段

ただの階段のように見える。

 🎲〈聞き耳〉〈観察眼〉:階段を調べてみると、階段下に隠し扉があり物置のような収納スペースになっていることに気づくだろう。そしてその中で何かが動くような、ガタガタという音が絶えず聞こえる。

中の物を引っ張り出してみると、奥の方から桐の箱が出てくる。その桐の箱の中には、木でできた左腕が大事に仕舞われていた。

「よかった・・・先を越されずに済んだか」と西宮が言った。

​​​・部屋1

他の部屋と違ってここは洋室のようだ。この部屋だけ後からリノベーションしたのだろう。大きなベッドが置かれている。どうやら西宮夫妻の寝室のようだ。

ここは流石に…と共鳴者が探索を戸惑うかもしれないが、西宮はそんなこと気にせずにガサガサと辺りを漁っていた。

部屋を見渡してみると、洋室にはあまり似つかわしくない古めかしいタンスがあるのが分かる。

 🎲〈聞き耳〉〈観察眼〉:そのタンスの一番下の段だけ最後まで閉まり切らないようだ。さらにその中から音がした。

  一番下の段を引っ張り出す→奥の方に布でくるまれた何かがある。布の中身は”右脚”だった。

胴体以外のパーツを手に入れたら、以下の描写を挟んでください。

​西宮が「あとは胴体だ・・・あれさえなければアイツも・・・」と呟いた。

その瞬間、近くの窓を叩く音がした。

窓の方に目をやると、人形が窓にガンガンと頭を打ち付けていた。

「もうあれほどの力を取り戻していたか・・・!急がねば!」

西宮は急いで押入れの方へと向かっていった。

出来れば押し入れの処理を最後にしたいです。順路的に最後になるようにはしていますが、もし先に見つかりそうなら押入れでの判定の難しくするなどして調整をお願いします。

​・押入れ

 🎲調査系、〈観察眼〉等トリプル以上成功:見た目より押入れの中が狭い気がする。


 押入れ以外のバツ印の箇所を探索し終え、西宮が駆けだしていく描写をしている場合→押入れへ行くと西宮が押入れを調べていた。「この押し入れに強い力を感じる。それに何かがおかしい。見た目よりも中が狭いんだ。恐らくどこかに仕掛けが・・・」と言っている。


しばらく押入れを調べていると、押入れの奥からガタガタと音がした。その音は段々と強さを増していく。

「危ない!押入れから離れろ!」

西宮が共鳴者に向かって叫ぶ。

押入れから距離をとると、ガタガタという音が振動になり押入れの外まで伝わってきているのが分かる。

何かが出てくる!そう悟った次の瞬間、人形の胴体であろうそれが宙を舞い共鳴者の前へと姿を現した。そのままユラユラとすぐ近くの部屋(部屋3)に入っていった。

イベント:封印の儀

部屋に入ると、先ほど入っていった人形の胴体、それに近づく和服を着た人形がいた。

それらが触れ合うと人形はカタカタと音を立て、みるみるうちに合体していった。

人形は胴体を取り戻してしまったようだ。

 🎲共鳴判定(強度5/上昇1+取り戻したパーツ数)

 ∞共鳴感情:自己顕示(欲望)、恨み(情念)、絶望(傷)


「力を取り戻してしまった・・・。もう一度封印しなければ・・・」


鬼気迫る表情で西宮は共鳴者に言った。​

「私の最後の力を使ってもう一度奴を無力化するから協力してくれないか。私は封印の準備をする。しばらくの間、奴を客間に近づかせないようにしてくれ」

封印の儀、防衛戦です。

これから一定回数、傀儡の妖の気を引く為に様々な技能を振ってもらいます。

こじつけられるならどんな技能を振っても構いません。

回数は共鳴者の数+2くらいが適正かと思います。

3回判定に失敗すると防衛失敗です。(3回失敗する可能性がなくなった時点で防衛成功で大丈夫です)

・防衛成功

「もういいぞ!!!そいつを客間まで連れてこい!!!!!」

西宮が大声で叫んでいるのが聞こえた。

急いで客間に行くと、床に敷かれた大きな紙の上に解読できない文字や図形で構成された面妖な陣が描かれていた。

共鳴者に追いついた人形はその陣を見るとカタカタと音を鳴らし西宮に襲い掛かろうとした。

しかしその体はしっかりと陣の中に入っていた。

その瞬間、室内にいるというのにどこからか風が吹くのを感じた。風は次第に強さを増していく。とても強い風は陣が描かれた紙を翻し、ビリビリと破いていく。紙は渦を巻き竜巻のようになり人形を包み込んだ。風と紙で視界が悪くなり、何も見えなくなった。


風が止んだ。舞い落ちる紙の中で、紙片に包まれ動けなくなった人形がそこに横たわっていた。

防衛失敗してしまった場合、戦闘になります。

西宮は戦闘に参加しません。 傀儡の妖のHPは最大12です。欠損しているパーツ数の分マイナスしてください。 (能力値は登場人物の欄を参照してください)

戦闘終了条件は「人形の妖のHPを半分以下にする」です。

​・防衛失敗

共鳴者は人形を惹きつけておくことができなかった。

人形は客間へと向かい、中へと侵入した。

「くそっ来てしまったか!まだ未完成だというのに・・・」

西宮は床に敷かれた大きな紙に面妖な陣を描いている最中だった。

「仕方ない、力ずくで解体する。幸いこいつはまだ本来の力を取り戻してはいない。今のうちに解体できればまた封じられるはずだ!」

防衛成功、または失敗したが戦闘に勝利した場合、エンディングAへ

防衛失敗し戦闘に敗北した場合、エンディングBへ


エンディングA

​人形を一時無力化することに成功した。

動かなくなったその人形をパーツごとに分解した西宮は、そのひとつひとつに札を貼った。

「これが今の私の力でできる精一杯だ。あなた方、協力してくれてありがとう。すまないがこの首を外へ出してくれないか」

首を持って外に出る共鳴者。その後を追ってよろよろと西宮も出てきた。

「私の残った力と、子孫たちの力を借りて、この首を葬ってしまおう。最後まで世話をかけるね」

そう言った西宮の体から、靄のようなものがふわりと浮かんだ。西宮は地面に崩れてしまった。

宙に浮かんだその靄は、どこからか集まり辺りを漂う靄とひとつになって濃度を増した。

人形の周りを囲み、完全に見えなくなったかと思うと、空高く浮かんで、消え去ってしまった。

後には人形の首はどこにもなくなっていた。


共鳴者が客間を掃除していると、しばらく居間に寝かせていた西宮が目を覚ました。

「あれ、飯食って寝ちゃったか?俺。なんかすげー変な夢見てた気がするけど」

寝ぼけた表情をしている西宮に、共鳴者は一先ず安堵する。

ふと西宮はポケットをまさぐって、4つ折りの紙を取り出し、それを見ていた。

何か納得した様子で、決意を固めたような、それでいて少し微笑んだような気がした。

「ご先祖様のお願いだし、聞いてやるか」と、空を見上げながら呟いていた。

エンディングB

​人形を無力化することができなかった。

人形から禍々しい気配が絶え間なく溢れ出る。それは次第に大きく、恐ろしくなっていく気がする。

そんな気配に引き寄せられてゆくように、持っていた人形のパーツが宙を舞い、人形の胴体にくっついた。そうだ、完成してしまったのだ。

人形は、その口をカタカタと鳴らした。嘲笑うように。

そして西宮の方を向き、目と口を大きく開いた。

西宮は突然苦しんだようにしゃがみ込むと、その場で気を失ってしまった。

それを見た人形がニタリと笑った気がした。

人形は家を飛び出しカタカタと音を鳴らしながらどこか遠くへと飛んで行ってしまった。


次の日の朝、西宮は病院で目覚めた。

共鳴者はそのお見舞いに来ているところだった。

西宮は「蔵の掃除をしていたのは覚えているけど記憶が曖昧である」ということと、「大きな人形が俺の周りでカタカタカタカタ言いながら宙を舞っている夢を見た」と共鳴者に話した。


・シナリオの真相、背景

1000年以上前に有名な人形職人であり傀儡師の西宮の先祖によって作られた傀儡人形があった。あまりに精巧な人形の体に目を付けた悪霊が憑依したことによって妖へと変貌してしまった。

傀儡の妖と対峙した西宮の先祖は、この傀儡人形をバラバラにすることに成功する。しかし妖力の高い傀儡の妖を完全に、それも一人で封じることは叶わなず、首だけを蔵の中に封じた。

それから西宮家の子孫たちは妖の封印を受け継いでゆき、1人1パーツずつを封じることにした。いつの日か封印が解かれたときに、完全に復活しないようにバラバラの場所に保管したのだった。

それから1000年もの時が経ち、傀儡の妖に妖力が戻りつつあった。そんな時に封じられていた蔵の扉が開いてしまった。これを好機と思い傀儡の妖は蔵から脱走。自分の体を取り戻すために西宮家を探し回る。

しかし、蔵にいたのは傀儡の妖だけではなかった。妖を最初に無力化した張本人である西宮の先祖の遺骨も蔵に保管されていた。その遺骨には魂の残痕が宿っており、傀儡の妖の復活の際に生じた妖気と共鳴する。そうして少しばかりの力を得た先祖の霊は西宮の体を借りて、共鳴者と共に、妖より先に人形のパーツを手に入れるべく奔走する。

傀儡の妖が全てのパーツを揃え切ることは阻止できたが、力を完全に取り戻しつつある妖をもう一度封じなければならない。西宮の先祖はかつて使ったものと同じ技を使い妖を無力化。そして自身最後の力と西宮家に漂う子孫の魂の残痕を集めて頭部だけを完全に消し去ることに成功する。

残ったパーツの封印は今を生きる西宮、そしてその子孫たちに託されたのだった。

エンディンングBの場合、傀儡の妖を封じることに失敗してしまった。

その場では何もされなかった共鳴者と西宮だったが、その存在は間違いなく覚えられたことだろう。実際に西宮は夢の中で傀儡の妖に何か悪さをされていたようだ。

今後、共鳴者の身に何が起きてしまうのか。誰も想像できない。


・あとがき


いい加減な事を言う人生です。

読んでいただき、遊んでいただきありがとうございます。

丹精込めて作られた人形には魂が宿るとかなんとか昔から言うようで、髪が伸びたり目が動いたり向きが変わったりしたそうなんですが、じゃあ傀儡人形だったらめちゃくちゃ走り回ったりブレイクダンスとかするんじゃないかなって思います。シナリオとは関係ないですけど。

傀儡の妖怪について、文献があれば参考にしようと思いネットで調べていたんですが、我先にとえっちなアニメが出てきたので調べるのをやめました。傀儡の妖怪や怪異譚を知っている方は教えてください。

物を集めて回る系のフリーホラーゲームみたいなテイストで作りました。あぁいうのって程よく楽しいので程よく楽しんでいただければ幸いです。


タイトル画像:しれい(https://twitter.com/___sirei___

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